「長年、運動音痴だと思っていた」——それはあなたが出来損ないなのではなく、体の構造が違ったのかもしれない
- 「運動音痴」と思われがちな事の背景に、関節のゆるさ(過可動)と協調運動の困難(DCD)が隠れていることがあります
- DCDの子どもの64%に関節のゆるさがあったという研究があります(一般的な身体能力と言われる比較群は33%)
- 問題は「自分がおかしい」ことではなく、体のつくり。つくりが分かれば、対策の仕方もわかるようになってきます。
体育の時間、ずっと不思議だった
走るのは後ろから数えたほうがはやい。見えているのに何故かボールは取れない。ダンスの振りは覚えられない。でも、身体は人一倍柔らかい。
「柔らかいのに運動ができない」という組み合わせは、たいてい「運動神経が悪い」の一言で片づけられてきました。本人も、そう思って生きてきたはずです。
けれど、柔軟性と運動の得意さは別物です。むしろ関節がゆるい身体は、動きを制御するためのコストが人より高くつきます。
運動が苦手な事に関する研究はなにを示しているか
運動の極端な苦手さには、DCD(発達性協調運動症)という名前があります。
DCDとは、麻痺や目の病気といったはっきりした医学的な原因がないのに、年齢から期待される水準よりも協調運動——体のいろいろな部分をタイミングよく連動させる動き——が極端に苦手で、日常生活に支障が出ている状態を指す発達障害のひとつです。字を書く、ボールを捕る、自転車に乗るといった動作の習得に人より時間がかかります。子どものおよそ5〜6%にみられるとされ、決して珍しいものではありません。
そしてDCDと関節のゆるさは、偶然とは言えない割合で重なることが分かっています。
- DCDと診断された子どもの64%に全身の関節のゆるさがみられた(一般的な身体能力と言われる比較群では33%)[2]
- 関節のゆるさで外来を受診した子どもの30〜50%に、運動発達の遅れがみられた[1]
「柔らかい」と「運動が苦手」は、別々の不運ではなく、同じ体のつくりの両面である可能性があります。
なぜ、関節がゆるいと運動が苦手になるのか
関節がゆるいと、関節の位置や動きを脳に伝えるセンサー(固有受容覚)の情報が曖昧になります[3]。 自分の手足がいまどこにあるか、正確に分からないまま動くことになる。 ボールが見えているのに手が間に合わないのは、目の問題ではなく、この変換の問題だと考えられています。
センサーが曖昧なぶん、脳は筋肉を常に緊張させて補正します。だから人と同じ動きをしても、使うエネルギーは多くなります。
「運動音痴」という言葉をやめるとしたら
これは体のつくりの話です。「自分が不器用なだけ」「練習が足りないだけ」だと 思ってきたかもしれませんが、必要だったのは頑張りの量ではなく、別のやり方でした。
有効なのは、自分の体に合ったやり方を知ること——関節を守る筋力の付け方、避けたほうがいい運動、エネルギーの配分など。
このサイトでは、HSDかもしれない方の人生が良くなるコンテンツをお届けしています。
もしかして自分もそうかも?と思った方は、まずは自分の関節のゆるさを確かめるところからチェックしてみてください。
- Developmental Coordination Disorder and Joint Hypermobility in Childhood: A Narrative Review. 2022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9317025/
- Jelsma LD, et al. The relationship between joint mobility and motor performance in children with and without DCD. BMC Pediatr. 2013. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3605363/
- Smith TO, et al. Do people with benign joint hypermobility syndrome have reduced joint proprioception? A systematic review and meta-analysis. Rheumatology. 2013. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23728275/