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HSPとHSD——「敏感すぎる」だけじゃなかったのかもしれない

この記事でお伝えすること
  • HSPは心理学の気質概念で、医学的な診断名ではありません。一方HSDは身体の診断名です
  • 「繊細だから疲れる」で説明しきれない不調に、身体側の説明がつくことがあります
  • HSPを否定する話ではなく、「もう半分の地図」を手に入れる話です

「繊細さん」の本に、全部は書いていなかった

「私、HSPかもしれない」「繊細さんの本を読んで、涙が出るほど当てはまった」—— そうやって自分の説明をひとつ手に入れたのに、まだ残っている謎はありませんか? 音や光に敏感なのは分かった。でも、この関節の痛みは? 覚えのないアザは? 毎日の立ちくらみは?

感受性の話だけでは、身体の症状までは説明しきれないんです。

HSPとHSDは、そもそも別のカテゴリの言葉

まず交通整理をします。HSP(Highly Sensitive Person)は、心理学者アーロンが提唱した 「感覚処理感受性が高い気質」を指す概念で、人口の15〜20%にみられるとされます[1]。 気質の名前であって、医学的な診断名ではありません。

一方、HSD(過可動性スペクトラム障害)は、関節のゆるさに症状が伴う場合につく医学的な診断名です。 名前は一文字違いですが、住んでいる世界が違います。 そして——この2つの集団は、重なることがあると考えられています。

「敏感さ」と「体のゆるさ」がつながる回路

英国の研究では、関節過可動のある人に自律神経の不調と痛みが多いことが示されました[2]。 立ちくらみ、動悸、体温調節の苦手さ——これらは体の内側からの刺激として、 常に神経系に流れ込みます。内側からの入力が多い体は、外側の刺激にも余裕がなくなります。 「人混みで消耗する」の何割かは、感受性だけでなく、立ちっぱなしの循環負荷と姿勢維持の筋疲労かもしれないのです。

ここまで読んで、「じゃあ私のHSPは気のせいだったの?」と不安になった方もいるかもしれません。 違います。感受性の高さはそのまま、あなたの気質として本物です。 この記事が言っているのは、感受性に全部の請求書を回さなくていい、ということなんです。

見分けるヒント——「心の過敏」では説明しにくいもの

  • 覚えのないアザ、捻挫やケガの繰り返し
  • 立ちくらみ・起立時の動悸(感受性は血圧を下げません)
  • 関節の痛み、外れそうな感覚
  • 「繊細さをケアしても減らない」種類の疲労

これらがある場合、感受性のケアと並行して、身体の側も確かめる価値があります。 5分で終わる自己チェック(バイトン・スコア)が入口です。

よくある質問

Q. HSPとHSD、両方当てはまる気がします。
ありえます。気質と体質は排他的ではありません。その場合、対策も2本立てになります—— 刺激の管理(感受性側)と、エネルギー・関節の管理(身体側)。両方の地図を持つ人がいちばん強いんです。

Q. HSPは病院で診てもらえますか?
HSPは診断名ではないため、「HSPの診断」はありません。 一方、HSDに関わる症状(痛み・疲労・立ちくらみ)は医療機関で評価できます。 受診するなら、身体の症状を入口にするのが現実的です。

「繊細さん」という言葉に出会って救われて、でもまだ謎が残っていたあなたへ。 その探し続ける姿勢が、もう半分の地図まであなたを連れてきました。

「繊細さケア」と並行して、体を確かめるには

刺激を減らす工夫(照明・音・人付き合いの設計)は、そのまま続けてください。 並行してできる体の確認は3つです。①自己チェックで関節のゆるさを測る(5分)、 ②立ちくらみ・アザ・関節痛の頻度を2週間メモする、③当てはまりが多ければ、身体症状を入口に受診する。 感受性のケアで減らない疲れが、体のケアで減ることがあります。逆もあります。 2つの地図は、競合ではなく分担なんです。

HSPのコミュニティで、体の話をしてもいい

「繊細さん」のコミュニティでは、心の話が中心になりがちです。 でも、もしあなたが体の症状も抱えているなら、その話をしてみてください。 「実は私も」と手が挙がる可能性は、研究の数字を見るかぎり低くありません。 感受性の話しかできない場所で体の話を我慢するのは、マスキングの一種です。 あなたの困りごとは、心と体の両方にまたがっていてよいのです。

この記事のまとめ

  • HSPは気質の概念、HSDは身体の診断名。別のカテゴリで、重なりうる
  • アザ・立ちくらみ・関節痛・減らない疲労は、感受性だけでは説明しにくい
  • HSPを否定する話ではなく、感受性に全部の請求書を回さない話
  • 両方の地図を持てば、対策は2本立てにできる
出典
  1. Aron EN, Aron A. Sensory-processing sensitivity and its relation to introversion and emotionality. J Pers Soc Psychol. 1997. https://www.hsperson.com/pdf/JPSP_Aron_and_Aron_97_Sensitivity_vs_I_and_N.pdf
  2. Csecs JLL, et al. Joint Hypermobility Links Neurodivergence to Dysautonomia and Pain. Front Psychiatry. 2022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8847158/